データ中心のエンタープライズアーキテクチャ

このタイトルの本を執筆したのは2002年~3年ごろなので、もう15年ほど前になります。当時は情報システムの最適化が個別業務から全社へ、さらにグループ企業へ広がりつつある状況でした。

多くの全体最適化プロジェクトを支援してきましたが、グループ企業における最適化活動は、いまだに継続中と言えるでしょう。

エンタープライズデータアーキテクチャ私が主として担当したのは、エンタープライズデータアーキテクチャの最適化です。

データには、つながりの密な部分と疎な部分があります。疎な部分に切れ目を入れて、密な部分を1つの塊として管理することが、データ管理の効率化やビジネスへの変化対応力強化につながると考えました。

つながりが強いデータ群にインフォメーションエリアと名をつけて、グループ企業全体が何種類のインフォメーションエリアから構成されるべきかを導きだしました。

従来から存在するサブジェクトエリアの考えに、データを分類する視点(リソース、イベント、集計)やデータ統制のテリトリーを加えて、インフォメーションエリアのコンセプトを創りました。

振り返ってみると、これらの分類・整理がグループ企業の情報システム全体最適化に役立っていると思える半面、新しいタイプのデータ群に対応しきれていない点も見えてきました。

昨今の動向で一番影響が大きいのは、IoTやソーシャルメディアで扱うデータ群が増加したことです。

たとえばIoTでは、エッジコンピューティングやフォグコンピューティングと言われるシステムアーキテクチャが登場しています。モノや人に張り付いたデバイスからセンサーデータが中央のサーバ(あるいはクラウド)に集められますが、その中間にも拠点ごとにデータを集約・処理するサーバを置くアーキテクチャです。

また、いったん集められたIoTデータは、従来から存在するDWHのデータと統合して分析されるようになりました。

一方、ビジネスも複雑化しています。

機器の稼働状況や故障の傾向を蓄積し分析すると、一種のノウハウとして価値を持つことになります。これを機器保守業者に売ることで新たなビジネスを創造することも可能になってきました。すなわち、従来はセンサーデータと販売データは、それぞれ個別の領域であったものが、ビジネスの複雑化によって境界線があいまいになってきたと言うことです。

これらの新しい事象により、インフォメーションエリアの1単位を切り出す基準を見直す必要がありそうです。

以前から、全体最適化されたインフォメーションエリアを切り出すにあたって、“ビジネスの前提条件を考え直しましょう”とガイドしていました。いままで別々であったものが“混じる”というのが1つのキーポイントです。

グループ企業全体で見た場合、個別企業では顧客と思っていた企業が業者にもなり、業者だと思っていた企業が顧客にもなる、A事業とB事業は別だと思っていたが、A事業でB事業の商品を売り、逆にB事業でA事業の商品を売ることもある。
ビジネスが広がり多様性に対応できることが、全体最適化の必須要件です。

IoTを含めたエンタープライズデータアーキテクチャでは、「制御系データとビジネス系データが混じる」「外部データと内部データが混じる」が重要な視点になってきました。

新たに加わったこれらの視点も考慮して、グループ企業の全体最適化を進めてほしいと思います。