事業を支えるデジタル事業基盤構築とデータマネジメントとガバナンスの取り組み


株式会社日立物流
IT戦略本部 デジタルビジネス推進部
部長補佐 塚本 健太郎 様
日立物流ソフトウェア株式会社
ロジスティクスシステム本部 デジタル開発G
プロジェクトマネージャ 須田 豊 様
ーー現在のお立場や役割を教えてください
(塚本様より)
デジタルビジネス推進部は、当社のお客様に向けた様々なデジタルビジネスを立ち上げていく際の推進組織という位置づけです。
現在の主要施策は、個々の3PL事業を超えてサブライチェーン全体の可視化・最適化を支援するサービス「SCDOS(Supply Chain Design&Optimization Services)」の開発と、既存事業の「可視化」を実現するデジタル事業基盤の構築です。

ーーどのような経緯から、デジタル事業基盤を構築することになったのでしょうか
(塚本様より)
2018年にブランドスローガンである「未知に挑む。」を、新たなビジネスコンセプト「LOGISTEED」に込めて始動し、2019年度からの中期経営計画をスタートさせました。
重点施策として力を注いでいるのが物流のデジタルトランスフォーメーション(DX)であり、パートナー企業との協創を支えるオープンプラットフォームの創出です。
具体的には、“金流”“商流”“物流”“情流(情報流通)”の“4流”を束ねた、これまでにないサプライチェーンソリューションをデザインし、新たなビジネスモデルを作り上げることを目指しており、“情流”を実現するに、多種多様なシステムのデータを収集・分析し、利活用する”デジタル事業基盤”が必要であるという結論に至りました。
ーー検討されたデータマネジメント施策とガバナンスについてお聞かせください
(塚本様より)
デジタル事業基盤の全体アーキテクチャ設計をはじめ、データモデルによるデータ構造の標準化、データアクセス権限の統制、メタデータ管理指針の策定など、さまざまな観点で検討を行いました(下図参照)。

ーー本格的にプロジェクトを着手するにあたり、ポイントや難所だった点を教えてください
(塚本様より)
データのプラットフォームはさまざまなサービスが生まれる基盤なので、サービスを企画するユーザに対して、いかに早く高品質なものを提供できるのか、という生産性を意識していました。そのため内製によるスクラッチ開発をやめて、生産性の高いツールの導入を決めました。
また、集めてくるデータは、各サービスを跨いで統合する必要があります。そこで、マスタデータやコードの共通化、またはテーブルの標準化をどのように進めていくべきか?また、収集したデータに対してアクセス権をどのように設定するか?これらの検討要素をアーキテクチャコンセプトに盛り込んで実装することを、当初から大きなポイントとして意識していました。
ーーMetafindコンサルティングがプロジェクトに参画したフェーズや期待、そして、実際の成果はいかがでしたでしょうか?
(塚本様より)
本プロジェクトにはデータマネジメントとデータモデリングが必要であると考えていましたので、その領域をMetafindコンサルティングにお願いしました。
一口にデータマネジメントと言っても様々なトピックがあるため、まずはその学習から入る必要がありました。そのため、先生役としてキーメンバーに対する知識のインプットと、データの標準化やセキュリティ指針の策定、メタデータ管理などの設計作業に関するガイドを期待していました。
事前知識のない中でゼロから作り出していくところが重要でしたが、踏み込んで素案を作成したり、レビュ結果をまとめたりと、全体的に上手くコントロールいただき、当初の計画通りにやるべきことが出来たように思います。
Metafindコンサルティングは、データマネジメントに関する標準のテンプレートや検討フォーマットが充実していたため、スピーディに進めることが出来ました。また、それらを日立物流向けにカスタマイズするなど、積極的に支援してもらえてよかったと思っています。
ーーデータマネジメントに関する支援の中で、一番印象に残っているものは何でしょうか?
(塚本様より)
特に、メタデータ管理については新しい発見が多かったです。
これまでメタデータは、データベースやテーブルのカタログ情報であると理解していましたが、今回コンサルティングを受けたことで、考えるべきメタデータの範囲が非常に広いことが分かりました。
例えば、共通コードやドメインの規約、データの所有組織や利用組織、アクセス範囲の情報なども含めて、メタデータモデルに定義し維持管理していく必要性を知ったことは非常に大きかったです。
(須田様より)
私は主に共通コードの定義を担当しましたが、当初は管理すべき現行のコードが明確ではありませんでした。今回、限られた範囲のなかで現行のコードを棚卸し共通コードの策定をしましたが、もう少し広いスコープの中で取組むことが出来たら、と感じました。
ただ、全社として統一して管理すべきものであるという認識が持てたことは大事なことです。
今回学べたものを、どう展開していくのかという運用はこれからですが、データマネジメントやガバナンスの知識がなかった中で、土台作りが出来たことは一つ大きな成果でした。
ーー今後の課題をお聞かせください
(塚本様より)
デジタル事業基盤という動くものは出来ました。ただ、残念ながら開発スピード優先になり、作成したガバナンス規約を十分に遵守しきてれていない部分もあるため、もっと浸透させていくことが課題になります。
また、新しい事業向けのサービスや既存の業務改善などに利用してもらわないと、デジタル事業基盤の価値が出てきません。プラットフォーム全般に言えることですが、使ってもらって初めて価値が出てきます。
そのため、我々自ら、データ利活用の企画支援も含めて、データコンシェルジュとしてプロジェクトに関わり、プラットフォームの利活用を進めていくことを目指していく方向です。
利活用が増えることにより見えてくるものがあると思っています。アーキテクチャは耐えうるものなのか、アクセス権限の管理はどうするのかなど、運営しながらデータガバナンス規約を改定していく予定です。
データカタログも導入していくつもりです。全社のシステムを対象とするというよりは、デジタル事業基盤にデータを連携する際に少しずつデータ資産を可視化して、データ利活用を加速化しようと考えています。
※取材日:2019年7月
会社概要
本社 | 東京都中央区京橋2丁目9番2号 日立物流ビル |
創業 | 1950年2月 |
資本金 | 168億200万円 |
連結社員数 | 46,295名 |
URL | http://www.hitachi-transportsystem.com/jp/ |