データ資源
日曜日の朝、のんびりとコーヒーを飲みながら日経新聞(2018.1.14)を開くと、まず目に飛び込んできたのが“データ資源 米中攻防”の文字だ。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25666290U8A110C1MM8000/
インターネット上の閲覧履歴や買い物履歴を“データ資源”とみなした記事である。消費者の嗜好分析や株価の予測には、確かにインプットとなるデータが不可欠である。それが宝の山であると言う。
さらに読み進めると“中国のネット通販大手がアメリカのマネーグラム社を買収しようとしたところ、対米外国投資委員会(CFIUS)が待ったをかけた”とのこと。
理由は、個人情報の扱いに信頼性がないためだそうだ。データは、単なる資源にとどまらず安全保障上の対象にもなるらしい。
AIやビッグデータの記事が最近多くなってきたためか、データの重要性をほとんどの読者が意識せざるを得ない状況だ。
データマネジメントがいままで以上に重視されることは、疑いようもない。
ところで、データ資源という言葉で、筆者と同世代の技術者が思い浮かべるのが次の書籍である。
「データ資源管理(William R. Durell 著、味村 重臣 監修、IRM研究会 訳、1987年、日経BP社)」
サブタイトルとして“企業内データの有効活用を目ざして”とある。この本には、データの活用そのものではなく、活用のために標準データをどのように管理しておくべきかが書かれている。具体的には、データ辞書の構築や会社全体の視点で見たデータ設計についてである。
30年前は、データ項目が標準化されていない時代であったため、冗長性のないデータ構造を設計し(正規化)、1つ1つのデータ項目に良い名をつけ、それらのデータ項目がどのシステム・どのプログラムで使われているかを明らかにしておくことが、データ資源管理の中心であった。筆者は、これらの取り組みをデータエンジニアリングのためのデータ資源管理と位置付けている。
同じデータ資源という言葉を使っていても、Durell氏の時代と今とでは隔世の感がある。
日経新聞の記事にあるデータ資源は、エネルギー資源や鉱物資源と同様の意味付けであり、まさに“資源”そのものを指す。
そういえば、ビットコインの仕組みも、採掘に貢献するといくらかのビットコインを入手できる。
それ自身が事業として成り立つかどうかは不明であるが、コンピュータを使った錬金術と言えるかもしれない。
最近は、顧客の購買データを握っているネット企業が、データを活用できる立場を強みと認識して、金融業に参入する例も増えている。
データ資源は、競争優位に立つための武器として使うことができる。実際に、データ資源を事業そのものに活用する方法が、次々と生まれつつある。
個別の会社で起きる、データを核としたイノベーションが、経済のあり方さえも変えていく、大きなうねりを感じる。