データマネジメント 第3世代へ

30年間データマネジメント業界でお客様を支援してきたが、時代によってデータマネジメントに期待されることやデータ活用の方向性が変わってきたと感じる。

Business and Data第1世代は、データエンジニアリングのためのデータマネジメントだ。データ視点で語っているからデータエンジニアリングという言葉を選んだが、要するに情報システム構築に関わるデータマネジメントだ。
1970年代~80年代、情報システムを次々と構築し、その初期にはEDP課(Electronic Data Processing課)と呼ばれる部署が活躍した。手書きの伝票をコンピュータで扱えるように変え、情報の受け渡しを効率化することによって、業務が改善された。
たとえば、メタデータ管理では、効率の良いデータベースの設計やDDLを自動的に生成する方法などが研究され広まった。

第2世代は、ビジネスの実態把握と意思決定のためのデータマネジメントだ。1990年代から2000年代にかけて、DWHに代表される情報系のシステムを構築し、“今ビジネス世界で何が起きているか”を関係者間で共有することが重視された。現場の課題解決や中間管理職の意思決定のために、複数の業務システムからデータを集め、さまざまな視点で集計や分析を行った。ただし、経営トップ自身がデータにもとづき何等かの意思決定をしていたかどうかは定かではない。
経営の視点は単独企業からグループ企業全体へ広がり、集めるべきデータも広範囲になった。従来よりも広範囲での目標達成や効率化を手助けするため、組織間(顧客や協力会社も含む)のコミュニケーションの場を作ったり、新たな体験を生み出す機会を作ることが、情報システム部門の役割に加わった。
グループ経営のためのデータマネジメントは現在も重視され、継続している企業が多い。
第2世代では、EAのためのデータアーキテクチャマネジメントや、データ統合のためのMDM・DWHに関するデータマネジメントが重視された。

第3世代は、新たなビジネス創造のためのデータマネジメントだ。これは、2010年ごろから始まり現在に至る。飛行機あるいは自動車・機械には、GPSや各種のセンサーがついている。これによって、予防保守など新たなビジネス提案が可能になっている。乱暴な運転をするドライバーには保険料を高く、安全な運転をするドライバーには保険料を低くした自動車保険も開発可能だ。あるいは、金融機関の融資審査の7割はAIに任せられるという。また、ツイッターの“今日も残業だ”のつぶやきを集計して、“残業する人が増えれば景気が良くなり、株価が上がる”といった予想も可能になりつつある。
最近、新聞紙上ではAIやIoTという言葉が頻繁に掲載され、新たなビジネスにチャレンジする話題で溢れている。
第3世代のデータマネジメントの特徴は次の3点である。
1点目は、ビジネスアイディアと結びつくデータ活用だ。今ここにないサービスを創ることとデータ活用が切っても切れない関係として存在する。そのため、データアーキテクトやデータスチュワードのほかに、ビジネス企画のスキルを持った人財が必要になる。
2点目は、非構造化データをマネジメントすることだ。画像・動画・音声・テキスト・センサーからのデータなど従来の構造化データとは異なる形式のデータを扱わなければならない。
3点目は、このようなさまざまな種類のデータを統合することである。既存の構造化データとツイッターのつぶやき分析の結果を統合したり、画像データと人感知センサデータを同じ時刻であわせて見たりする。

ここに紹介した第1世代から第3世代のデータマネジメントは、次の世代になったからといって前の世代の機能が不要になるわけではなく、積み重なる性質がある。
第3世代のデータマネジメントはまだまだ発展途上にある。今後、蓄積したデータを売ることも含めて、新種のデータマネジメントが生まれてくることになるであろう。