データマネジメント成熟度モデル (DMM) : データマネジメント用語解説7

データマネジメント成熟度モデル(DMM)とは?

DMBOKではデータマネジメント成熟度モデル(Data Management Maturity Model:DMM)を次のように定義しています。

組織内で実施されているデータ関連業務に対してランク付けするための方法。データマネジメントの現状とそれが組織に与える影響を明らかにする。

(DAMA日本支部&Metafind (2018), データマネジメント知識体系ガイド 第二版, p. 572,図103コンテキスト図より引用)

データマネジメント改善の方向性を示すDMM

データの価値はビジネスにいかに貢献するかで決まります。日々の激しいビジネス変化に応じて、データの価値も変動します。
データマネジメントはデータの価値を向上させていく活動ですから、現在の活動が最適なものか、定期的に評価(アセスメント)する必要があります。
DMMはこうした評価の基準となるモデルで、企業のあるべき像と比較して、現在のデータマネジメント活動がどの程度のレベルにあるのか可視化してくれるものです。
また、より上位のレベルの活動を確認することで、今後の改善の方向性を関係者間で共有でき、データマネジメント活動の見直しのインプットにもなります。
こうしたモデルは、複数の情報技術団体やベンダ企業によって異なるものが公開されていますが、なかでもアメリカのCMMI研究所が2014年にリリースしたものが有名です。一般的に、DMMと言うとこの研究所のものを示すことが多いです。

https://stage.cmmiinstitute.com/dmm

以下、CMMI研究所のDMMについてもう少し説明します。

DMMを使った評価結果のイメージ

DMMの評価軸

DMMでは25個のプロセス領域(※)と5つのレベルに分けられていて、ファンクショナルプラクティスと呼ばれる各レベルで実施するべき活動・成果物・役割などが定義されています。日々実施しているデータマネジメントをこのファンクショナルプラクティスと突き合わせることで、プロセス領域毎に企業の現在のレベルを確認できます。
※CMMIではデータガバナンスやメタデータ管理等の主要なデータマネジメント施策単位をプロセス領域と呼ぶ。
たとえば「データ統合」のプロセス領域では、次のようなファンクショナルプラクティスが定義されています。

【データ統合のファンクショナルプラクティス】
<レベル1:実行された>
1.1 システム間でデータ統合が行われている。

<レベル2:管理された>
2.1 データ統合計画が文書化されている。

<レベル3:定義された>
3.1 組織は、データ統合活動を行うための標準的なプラクティスとルールを遵守する。

<レベル4:測定された>
4.1 統合測定指標の統計的分析を指針にして、インターフェースや統合の変更に関する意思決定を行う。
成果物:統計解析結果、データプロファイリング分析、高度に共有され継続的に改善されるデータ

<レベル5:最適化された>
5.2 組織が統合のベストプラクティスを業界内で公開し、共有する。

(CMMI Institute (2014), Data Management Maturity (DMM) Model version1.0, p.137-143より筆者抜粋、翻訳)

たとえばある企業がデータ統合のルールを策定したが、具体的な活動を始めたばかりだとしたら、その企業のレベルは<レベル3:定義された>状態となります。また、今後は<レベル4:測定された>状態に向けた活動を実施することで、より理想的なデータマネジメントの実現に近づけます。

DMMを上手く活用するポイント

●評価の目的を明確にして対象を絞り込むこと

CMMI研究所では全部で414のファンクショナルプラクティスと596もの成果物を定義しています。レベル3まで絞っても、およそ200のファンクショナルプラクティスと関連する成果物をチェックすることになり、全社横断で評価すると一大プロジェクトになってしまいます。

アセスメント自体は長期で行うものではありません。また、たいていのデータマネジメントの担当者は「データセキュリティの管理は適切に行っているが、データ品質管理はルールさえもない」というように、どの施策に問題があって今後着手するべきか、大まかな感触は持っています。ただその裏付けがなく、計画に落とせなくて困っていることが多いです。

まず、レベルの高いプロセス領域の現状把握をしたいのか、それともレベルの低いプロセス領域の改善点を明らかにしたいのか等、評価の目的を明確にして対象となる領域を絞った方がよいでしょう。

●組織毎に評価すること

社内組織毎にデータマネジメントの実施状況にばらつきがある企業では、全社的な評価を行うと、レベルの高い組織があってもその実態が見えにくくなります。こうした企業では、組織毎に評価する方が実態を正確に把握できて、改善点も明確になります。

また、レベルの高い組織で実施しているファンクショナルプラクティスは、他の社内組織からすると、他社事例に比べて受け入れやすいものです。こうした社内のベストプラクティスをレベルの低い組織に適用すれば、全社でデータマネジメントの質の向上に繋がります。

弊社では上記のようなポイントを押さえ、独自のフレームワークに基づいたアセスメントサービスをご提供しています。
今後、データマネジメントをどこから手を付けるべきかわからない、アセスメントに関心があるという方はぜひご連絡ください。