データマネジメントの実態と最新動向2024を読んで(前編)
年の瀬が迫る中、皆さまいかがお過ごしでしょうか。今年最終号のブログは吉岡よりお届けします。
今月上旬に、「データマネジメントの実態と最新動向2024(インプレス社)」が出版されました。この書籍は、国内企業のデータマネジメントの取り組みや、データマネジメント関連のサービスやツール、ベンダーの戦略動向をまとめた調査レポートです。
https://research.impress.co.jp/report/list/enterprise-it/501799
今回のブログでは主に第2章「企業のデータマネジメントの取り組み実態調査」を取り上げます。この章では、データマネジメント領域毎に国内企業担当者にアンケートを取り、各社の導入状況や抱えている課題、またそれに対する著者の洞察をまとめています。それらに対し、調査結果を要約しつつ私が共感したこと、意外だったことなどをコメントします。
データ品質管理
~データ品質管理の実施企業は8割弱。主に部門やシステム単位で実施されている。~
(資料2.2.1「データ品質の維持・向上の活動状況」より筆者要約)
非常に高い数値のため、この調査結果にはやや驚かされました。ただ、主に部門やシステム単位で実施されていることを考慮すると、納得がいく結果です。データ品質が悪いと目の前の業務に直ちに影響を及ぼしてしまいます。そのため、データ品質管理は日常的な取り組みとして分かりやすく身近な存在のように思います。そもそもこの分野は、DMBOKなどで「データ品質管理(Data Quality Management)」という用語が広く認識されるようになる遥か以前から、各社が黙々と取り組んできていました。顧客の名寄せや住所のクレンジングなどが代表的な例です。とはいえ、全社レベルでデータ品質管理を実施している企業はまだ少なく(全体の2割未満)、部門を超えてデータ品質を改善するにはなお高い壁が存在するでしょう。これは全社のデータの利活用を実現する上での重要な課題と考えています。
マスターデータ管理
~全社的なマスターデータの整備に取り組む企業が5割近くに達している。~
(資料2.2.3「マスターデータマネジメントの取り組み状況」より筆者要約)
こちらも比較的高い数値と感じており、喜ばしい結果となりました。この結果の要因には、昨今のDXやアナリティクスブームがあると考えています。しかし個人的には、まだ多くの企業が各業務システムでローカルマスタを依然として使用しているように感じています。実際のところ、全社的なマスターデータの整備に取り組む企業の多くは、各業務システムで生成されたローカルマスタを、データ利活用のために後続の仕組みで変換・統合しているケースが多いのではないでしょうか。変換の仕組みをいつまでも維持し続けるわけにはいかないため、最終的には上流の業務システムも含めたマスターデータの一元化を視野に入れた取り組みを期待したいところです。
データ統合基盤構築
~既に多くの企業がデータ統合基盤を構築済。ただしその運用に課題を抱える。~
(資料2.3.1「データ統合の状況」より筆者要約)
この領域は様々なベンダーが数多くのソリューションをリリースしており、大変賑わっています。また、ほとんどの企業では、既に何らかのデータ統合基盤(DWHやデータレイク、仮想統合基盤など)を構築しています。そのため、ユーザーの焦点はこれらの基盤をどのように活用するか、といった運用面の課題に移っているように感じています。そこで今回は「データ基盤の活用が進まない(3割強)」という課題に注目してみました。本書の第1章では「データ分析のためのインフラやツール導入は活発だが、活用のレベルはそれほど上がっていない」と述べられていましたが、その通りです。最近の各企業のデータ統合基盤構築における特徴として、具体的なビジネスユースケースが見えていない状況でも、IT部門が主導で過大投資が行われている印象を受けます。テクノロジーへの投資だけでなく、事業部門が抱える業務課題を明らかにし、データを利用した改善提案を行うなど、事業部門に密着してニーズを引き出す行動も同時に行うことができると良いでしょう。
紙面の都合上、今回はここまでとさせていただきます。次回のブログでは、弊社の若手コンサルタントにバトンタッチし、「メタデータ管理」「データモデリング」「人材・組織」に関する考察を述べてもらいますのでお楽しみにお待ちください。
ところで本書は、上記のような実態調査レポートだけでなく、国内企業のデータマネジメント成熟度を独自の観点で評価し、問題点や今後の展望に向けた提言などもまとめています。読み応えのある書籍ですので、現在データマネジメントに携わる関係者の方にはぜひご一読いただきたいと思います。
では皆様、良いお年をお迎えください。