ビジネスデータスチュワードとは?

データマネジメント&ガバナンスの実践ガイド

さて今回はデータスチュワード連載ブログ第2弾となります。

前回のブログでは、書籍の紹介を交えながら、データスチュワードシップとは何か、その必要性やあり方について解説しました。今回は、データスチュワードシップの中心的な存在である「ビジネスデータスチュワード」について、その役割、必要なスキル、そして選ばれ方について解説します。

ビジネスデータスチュワードの役割

ビジネスデータスチュワードは、データスチュワードシップの中でまさに主役となる存在です。書籍『データスチュワードシップ』では、さまざまな役割について解説されていますが、今回はその中でも主要な役割に焦点を当てて説明します。

「機能領域におけるデータガバナンスを実行する責任を負う」

ここで言う「機能領域」とは、例えば営業部門における顧客管理や受注業務などのビジネス機能を指します。ビジネスデータスチュワードは、これらのビジネスやデータに精通した専門家が担います(ちなみにビジネスデータスチュワードの上位職として営業部門全体を統括する役目を「データガバナー」と呼びますが、この辺りのお話はまた別のブログで触れたいと思います)。ビジネスデータスチュワードは、担当する機能領域内のデータが、ポリシーやプロセス、手順に従って適切にマネジメントされているか、監視・統制します。

「ビジネスユーザーがデータを理解できるようにする」

データが適切に管理されるためには、ビジネスユーザー全員がデータの意味や、従うべきビジネスルールを理解している必要があります。そのため、ビジネスデータスチュワードはデータを定義し、その内容についてデータを利用するビジネスユーザーに正確に伝える必要があります。このことは担当する機能領域のデータにおけるメタデータ管理責任がある、と言い換えられます。

「ビジネスの利害関係者と協力し、データ問題を解決する」

時には、データに問題が発生することもあります。例えば、顧客住所が最新化されていないといったデータ品質の問題もあれば、海外の顧客情報の移転などコンプライアンスに関する問題も想定されます。このような問題に対し、ビジネスデータスチュワードはリーダーシップを発揮し、ビジネスニーズに照らし合わせてデータの定義を調整し、利害関係者が納得する解決策を提案するなどの活動を積極的に行います。

ビジネスデータスチュワードに求められるスキル

ビジネスやそのデータに関する理解が第一に求められます。それに加えて、以下のような要素も必要とされています。なかなか、興味深い内容です。

  1. 文章力
    質の高いデータ定義を、わかりやすく正確に文章化する能力が求められます。単なる文章力ではなく、専門的な内容を理解し、それを他者に伝えるための技術も備わっているとより望ましいです。
  2. 改善への取組みに対する姿勢や情熱
    質の高いデータを生み出しそれを維持するためには、時に大きな労力が必要となります。その過程では、多くの試行錯誤や修正を伴います。その労力を惜しまず、情熱をもって改善に取り組む姿勢が重要です。
  3. 対人スキル
    さまざまな利害関係者と協力し、合意形成する力が必要です。これには、政治的な洞察力やリーダーシップ、そして効果的なファシリテーション能力も含まれます。複雑な人間関係の中で、調整役として活躍できる能力が求められます。

これらのスキルを総合的に身につけることで、データスチュワードの役割を果たせるようになります。

ビジネスデータスチュワードの選ばれ方

ビジネスデータスチュワードは、上位職であるデータガバナーによって正式に任命される、と定義されています。ただし、単にポストを設けて人を割り当てる、という単純な話ではありません。DMBOKでは、「最良のデータスチュワードは発見されるものであり、作られるものではない」と言っています。実は、データスチュワードに相当する役割を果たしてきた人々は、皆さんの組織内にもすでに存在します。このような人々は、日頃からデータに強い関心を持ち、さまざまな問題解決に積極的に取り組んでいるため、周囲からも一目置かれる存在であるはずです。そうした人物を見出し、正式な役割を与えることで、彼らのこれまでの功績を評価することにもつながり、さらなる成果が期待できるようになります。

ビジネスデータスチュワードは、データスチュワードシップの中心的な存在ですが、その活動を彼らだけで担うことはできません。書籍「データスチュワードシップ」の中では、「テクニカルスチュワード」や「ドメインデータスチュワード」といった役割を設け、組織内で分担してデータスチュワードシップを実現する方法が紹介されています。次回のブログでは、その点について詳しく解説します。