Data Handling Ethics:DMBOK 2nd editionを読んで その2
Metafindコンサルティングの本間です。データアーキテクチャおよびデータガバナンス策定などのコンサルティングを得意としています。また、今年からは日本データマネジメント協会日本支部(DAMA-J)において、データマネジメント成熟度モデル(DMMI)を読み込む分科会に参加しています。
さて、長くなりましたが、本題です。
タイトルの「Data Handling Ethics」とは。
上手な日本語訳が出来ませんが、「データ処理倫理」(データの取り扱いに関する倫理規定)とでも言うのでしょうか?
再生医療やクローン技術、AIの発展に伴い、それらを取り扱う人間の倫理観が問われれることが多くなっています。技術の発展は、経済的にも精神的にも人間に豊かさをもたらす半面、誤った取り扱いにより、人間の尊厳を脅かすことにもなりかねません。
データの取り扱いも同様であると、DMBOK2ndでは1つの章を割いて「Data Handling Ethics」について解説をしています。
基本的には、研究倫理を提唱したベルモントレポート1の3原則「人格の尊重」「恩恵(善行)」「正義」がデータや情報の倫理原則にも適用されるとのこと。
- 人格の尊重:個人としての尊厳と自主性を尊重する。
- 恩恵:害を与えない。害があったとしても影響は最小限とする。
- 正義:公平であるかどうか。特定のグループが不利益や差別を被ることがないか。
プライバシーに関する法律(GDPR2や個人情報保護法など)などは、この原則を加味して策定されているようです。
法に則って個人情報を適切に管理することに加え、DMBOKでは、データの取り扱いそのものについても、ルールを設ける必要があると触れています。
例えば、
- 仮説を検証する際に、仮説の正しさを導くデータセットを用いて検証してはいけない。バイアスされたデータによる分析結果は、意思決定をミスリードしてしまう。
- 個人情報はマスキングだけでは十分ではないことを認識する。いくつかの属性を組み合わせることにより個人が特定されてしまうため、十分に注意する必要がある。
など、いくつか具体的な「べからず集」が書かれています。
データの利活用の進展に伴い、個人情報を慎重に取り扱う必要が出てきています。
個人の「人格の尊重」「恩恵」「正義」を守るためには、データを取り扱うための「倫理」が求められるため、タイムリーな内容だと感じさせるDMBOKの章でした。