概念に物理を当てはめて可視化する
データ利活用やシステム再構築の際に、データの整理も兼ねて現行データの可視化に取り組む企業も多いのではないだろうか。物理データをリバースして可視化するやり方もあるが対象テーブルが膨大なため、棚卸後の意味的な整理に非常に時間が掛かってしまう。
そこで、本格的な作業に入る前に、概念データを整理し、その概念データに物理データを当てはめるように可視化するアプローチをお勧めしたい。このアプローチを取ることで、自分の頭の中にベースの知識が構築され、可視化作業を効率的に行うことが出来る。その内容について、2つのケースを通して紹介したいと思う。
初めに、業務機能一覧などの既存資料をもとに、各業務機能の概要とその業務機能で生み出される情報を順番にヒアリングする。そのヒアリングで把握した内容をもとに、概念データモデルを整理する。この概念データモデルは、ある程度想定レベルで作る簡易なもので良く、場合によってはデータ項目を割愛しても構わない。
ただし、業務全体の骨格データ構造が把握できるよう、主要なエンティティの洗い出しには注意を払う。この概念データモデルをベースに、個々の画面や帳票、テーブルをエンティティに当てはめるように可視化を進めていく。
2つ目は、システム間のI/Fを可視化するケースだ。
まず、部門間でどのように情報が連鎖しているかを、データ流通図として概念的に整理する。例えば・・・
営業部門 → (受注データ) → 物流部門 → (出荷データ) → 債権管理部門 → (請求データ) → 会計部門
・・・といった要領で部門間のデータの流通関係を図表化する。この際、基幹業務として部門間でやりとりするデータが漏らさず整理されるよう留意する。よって、部門を横断して業務を把握する有識者にヒアリング出来ることが理想である。
ただし、そのような有識者は非常に少なく協力を得るのも難しいことが多い。そのため、全社レベルで描かれたシステム俯瞰図などの既存資料をもとに、不明点などを適宜ヒアリングして補う方法を取る。こうして整理したデータ流通図をベースに、システム間に物理実装されているI/Fデータを当てはめて可視化を進めていく。
2つのケースを紹介したが、本格的な作業に入る前に、全体の骨格構造を概念的に掴んでおくことがポイントだ。全体の骨格構造が事前に頭の中に整理されていれば、それを拠り所にテーブルやI/Fデータをそこに当てはめることで、その1つ1つの業務上の意味や用途を素早く判断出来る。
また、同じ意味のデータを見つけ出すことが容易になるため、データの標準化や統廃合の検討にも有効である。仮にその構造から外れたデータが出てきたとしても、既に把握している骨格構造に枝葉を補完しながら知識を広げていけば良い。複雑化するデータを効率的に可視化する上で、有効なアプローチだと思うので機会があれば試してみて欲しい。