試されるIS部門主導のDX

今年も残すところあと僅かとなりました。改めて振り返ると、コロナウィルスのおかげで大変な一年だったなとつくづく感じています。とくに春先頃は「これで景気も傾き仕事も思うように進まなくなるだろう」と覚悟していたものです。ただ夏頃からニューノーマルと呼ばれる社会が徐々に動き始めました。お客さまともZOOMやTeamsといったWeb会議システムで打合せや議論を行うようになり今ではすっかりそれが当り前になりました。Web会議システムはホワイトボードを使ったディスカッションには不向きですが、画面を共有した成果物のレビュや、短時間の打合せなどには最適ですね。

コロナに負けずDX投資は引き続き好調

さて、データの世界に身を置く立場からこの一年を振り返ると、DX(デジタルトランスフォーメーション)がずいぶんと市場に浸透した一年だったと感じています。コロナ禍でほとんどの産業は投資を抑制せざるを得なかったと思われますが、この分野だけは活発な投資が行われていた印象があります。「デジタルサポート部」や「DX推進室」などといった横串の組織を立ち上げ、データによる業務変革の動きを加速させようとする企業を多く見受けました。また同時に「これを機に足元のデータ環境も整備しよう」という機運も高まり、データの可視化や標準化といった取り組みにも着手する企業も増えてきたように思います。データマネジメントの普及に努める弊社にとって、この状況は喜ばしく受け止めています。

IT先行で取り組んでみたものの・・・

DX組織は、各企業ともIS部門が主導するケースがほとんどです。やはりIS部門の強みを生かして、

  • 大規模にデータを収集するためのデータレイクを構築する
  • 収集したデータをカタログツールを使って利用者に公開する

典型的なアプローチとしてはこのような活動かと思います。ただし大掛かりな統合基盤を構築したり高価なツールを導入したとしてもその使い手が少ないと過剰投資となり周囲の理解も得られません。DX組織立ち上げの渦中にいる皆さまの中にも、このような状況に頭を悩ませた方も多かったのではないでしょうか。

事業部門を支援する。ただし個別最適に気を付けて

具体的なデータ利活用テーマがありそうな事業部門を見つけ、着実に成果を上げることもDX組織の重要な役割です。場合によっては、受注率向上や在庫削減等に頭を悩ます事業部門の現場に入り込み、彼らの課題の掘り起こしやデータ利活用提案なども必要になるでしょう。かと言って特定の事業部門への貢献に終始してしまうと、個別最適にデータを扱ってしまう危険性があります。彼らの事業に関係する範囲内だけで取引先マスタの統合をしてしまい、結局そのマスタデータが使い捨てとなっては元も子もありません。ここにデータマネジメントの難しさがあります。事業部門を支援しつつ、その取り組みの中で整備したデータが他の事業部門でも再利用できるよう、全社視点のデータマネジメントを同時に考えていくことが大切です。

中期的なロードマップを作ろう

まずいくつもの事業部門と意見交換を重ね、課題や利活用ニーズを棚卸ししてみましょう。それを全社視点で整理集約し、DXを推進していくための中期的なロードマップを作ることがポイントです。

  • 当面、どの事業部門のどの業務課題をターゲットとするか
  • 業務改善やデータ利活用施策をどのように支援していくか
  • 将来を見据えてどこまでのスコープでデータを収集しておくか
  • そのために統合や標準化が必要なデータは何か
  • それぞれの活動はいつまでに完了させる必要があるか
  • 巻き込まなければならないステークホルダや業務有識者は誰か

ロードマップを作ることにより、必要な投資と期待する成果は何か明確にすることができます。また、DX組織として何にどのように貢献していくのかも具体化されるため、周囲からの理解や協力も得られやすくなるでしょう。データ利活用とデータマネジメントはDXを推進する両輪です。一方に偏り過ぎずバランスを取りながら取り組むことに心がけてください。

最後になりましたが本年はありがとうございました。来年も引き続きお付き合いのほどよろしくお願いします。どうかお体を大切に良いお年をお迎えください。