データスチュワードは、データ利活用のとりまとめ役 ?!

データスチュワードは、データ利活用のとりまとめ役 ?!

企業のデータ利活用が拡大する中、データスチュワードの肩書きを持つ方とお会いする機会が増えてきました。しかしそうした方々の悩みを伺うと、「その仕事はデータスチュワードが担うべきだろうか」と疑問に思うことがあります。
本記事では、まず本来のデータスチュワードの役割について振り返り、最近のデータ利活用でデータスチュワードをとりまとめ役として任命してしまう背景や問題点について解説します。

データスチュワードは業務領域/部門の代表としてデータをどう管理すべきか判断する

DMBOKでは、データスチュワードの役割を「他者を代表して組織にとって最善の利益のためにデータ資産を管理する」と定義しています。「他者」とは、日々の業務の中でデータを生み出している業務部門を指します。
データスチュワードは、具体的には次のような活動を日々行います。

  • データ定義書などを用いてどんなデータが業務部門にあるかを可視化する
  • 業務要件を基にそれらのデータのあるべき姿と現状のギャップを明らかにする
  • あるべき姿を目指すためのルールや標準を定める
  • それらのルールや標準がきちんと守られているかを監視し統制する

データスチュワードはデータマネジメントの推進役である、と言ってもいいでしょう。
よろしければ、活動詳細について次の別記事もご参照ください。

「データマネジメントを支えるデータスチュワード」 https://metafind.jp/2018/11/27/data_stewards_support_data_management/

データスチュワード とは データガバナンス用語解説13」 https://metafind.jp/2022/08/25/what-is-data-steward/

本サイト過去記事より

データスチュワードはこうした活動を業務要件に基づいて進めるので、担当する業務領域や部門が決まっています。彼らは業務要件を理解している必要があるため、各業務部門のデータオーナによりその部門のメンバから選ばれます。IT部門から選ばれることもありますが、そうしたケースではシステムの運用・保守経験から業務知見を持つ人がデータオーナによって選ばれ、かつ責任の所在はあくまでも業務部門のデータオーナにあります。

データ利活用者のとりまとめ役も“データスチュワード”と呼んで良いのか?

データスチュワードは前述の役割から、データ利活用の際には利活用者からの問い合わせに答える“業務部門毎の代表窓口”となるのが一般的でした。
ところが最近、部門横断のデータ利活用者のとりまとめ役を指してデータスチュワードと呼ばれるケースが増えています。

なぜこのような状況になっているのでしょうか。
何社かお話を伺うと、次のような声が聞かれました。

  1. 複数部門を横断してデータ利活用要件をまとめ、推進・調整する職種が見当たらない
  2. すべての業務部門でデータ資産の管理者を見つけることが難しい

2番は過去記事で見つけ方について紹介していますから、本記事では1番にフォーカスします。
通常のデータ利活用プロジェクトでは他にも、データサイエンティストやデータエンジニアといった職種の方が参加しますが、全体の推進・調整役を担うことはないようです。データサイエンティストやデータアナリストは分析技術によりデータから業務上の洞察や価値を見出す技術者であり、データエンジニアもデータ基盤を物理実装し維持する技術者であるとして、推進・調整役に適していないと考えられるようですね。

一方、先にも述べたようにDMBOKの定義ではデータスチュワードは業務部門メンバから選ばれ、業務要件を基に活動する役割を担います。データの問い合わせ窓口にもなるなら、利活用でも推進・調整役にピッタリだ、と考えられるようです。これはデータスチュワードが「データ要件を定義する」役割を持つ部分に着目して、データ利活用要件の理解と調整まで拡大して捉えてしまっているように見受けられます。

こうして拡大された役割により、とりまとめ役のデータスチュワードは利活用だけでなく、業務データ要件のとりまとめまで任されがちです。結果として業務側/利活用側の両方に配慮してデータ要件を調整することで、とりまとめ役の役割範囲が広くなり「データマネジメントの要件定義がうまくいかない」と悩むことになります。

業務側には業務データの担当者を置き、データ利活用側はデータ利活用の要件を整理した上で業務側と調整する、というのが責任分界点もはっきりしており、正しい姿ではないでしょうか。

まとめ:利活用の調整・推進役とデータスチュワードは分けるべき

筆者は、データスチュワードはDMBOKの定義のとおり、データオーナの代わりにデータマネジメントを推進する役割であるべきで、データ利活用者の推進・調整役とは分けるべきだと考えます。

データ利活用の要件をまとめ、利活用の調整・推進をするのに適切な職種は他にもあります。
よく聞かれるのは、データ利活用を推進するためのCoE(Center of Excellence)組織を設置し、その中にデータサイエンティスととともに、データ要件を取りまとめたり、調整したりする役割を設置するというものです。定まった言葉はありませんが、データコンシェルジュやデータキュレータを名付けているケースも見受けられます。こうした新しい職種が受け入れ辛いのであれば、まずは体制構築の目的に立ち返り、データ利活用に必要な役割を明確にして、分かりやすい日本語名をつけることをおすすめします(利活用要件定義者、新規データ事業実行担当、などなど)。


ところで本記事を作成する際に、データスチュワードがどこまでの役割を担うべきかについて、次の書籍を参考にしました。
“Data Stewardship An Actionable Guide to Effective Data Management and Data Governance SECOND EDITION” David Plotkin
https://shop.elsevier.com/books/data-stewardship/plotkin/978-0-12-822132-7
弊社ではこの英書を現在翻訳中です。上期中に出版を目指して現在作業を進めておりますので、ご期待ください!