DMBOK2改訂版で基準を再確認しよう
今年の3月に「DAMA-DMBOK2 Revised Edition」(以下、「DMBOK2R」と略)がリリースされました。この改訂版は、アマゾンや海外のWebサイトで既に販売されています。詳細はこちらのリンクからご覧ください。https://technicspub.com/dmbok2/
今回のブログでは、DMBOK2Rの主要な変更点と背景などについて紹介します。
DMBOK2Rのリリースの背景・位置付け
DMBOK2は2017年のリリース以来、データ利活用やAIの進展、またはデータセキュリティへの意識の高まりなどを背景に、多くのデータ専門家から支持を受けてきました。既にデータマネジメントのデファクトスタンダードとしての地位を固めたと言っても過言ではないでしょう。DAMAインターナショナルではこのような状況を考慮し、今回は「書籍全体の見直しではなく内容の不整合や不正確さに対処することに重点を置いた改訂を行った」とアナウンスしています。
主な変更点
主な変更点は次の通りです。
- 誤字脱字、用語の修正
- コンテキスト図の整合性の確保
- 第13章「データ品質管理」の見直し
それぞれについて、具体的な例を交えながら概要を説明していきたいと思います。
1.誤字脱字、用語の修正
まず、軽微な文字の誤りが修正されていますが、これについては特に気にする必要はありません。また、一部用語も変更されました。例えば「Data Governance program」が「Data Governance function」という言い方に変更されています。これはデータガバナンスが継続的な取り組みであるため、一過性の印象を与える「program(計画・演目)」よりも「function(機能)」の方が適切であると判断されたものと想定されます。このような用語修正は他にも幾つかありますが、「Data steward」や「Subject Area(対象領域)」といった、全体に影響を及ぼすような重要な用語の変更はありませんので、ご安心下さい。
2.コンテキスト図の整合性の確保
各章のコンテキスト図を更新し、本文との整合性を高めました。これにより、読者が各知識領域の内容をより容易に理解できるようになりました。そもそもコンテキスト図とは、その章のゴールやアクティビティ、成果物等がコンパクトに整理された便利な図です。この図を見ればその知識領域が凡そどのような内容なのか把握できるため、多くの読者が活用されていたのではないかと思います。ただ一部の章で、アクティビティ名や成果物名など、本文の内容と一致しない記述が散見され、場合によってはミスリードを招いていたことは否めませんでした。
3.第13章「データ品質管理」の見直し
今回の改訂は全体としてはマイナーバージョンアップと考えられますが、この章だけには内容自体に大きな修正が加えられています。例えば「Timeliness(適時性)」のようなデータ品質評価軸が明確化され理解されやすくなりました。従来のデータ品質評価軸は、各識者による定義や解釈の違いが長々と紹介され、どれが標準なのかやや不明確なものでした。DMBOK2Rでは「Timeliness(適時性。データが生成されてから利用者がアクセスできるまでの時間)」と「Currency(最新性。データが最後に更新された日付と現在との相対的な関係)」の2つに明確に区別し、それぞれの基準を具体的な用例とともに説明されています。また、Data Enrichment(データ強化)の手法としてジオコーディング(住所や地名を基に緯度・経度を割り当てること)等のトピックも加わり、現代のデータアナリティクスの需要にも応えています。
最後に
DAMAインターナショナルでは、既に次版である「DMBOK3」の執筆チームの募集を開始しています。次版では今回見送られた書籍全体の見直しも期待されるため、データサイエンスやデータファブリックのような進化する技術トピックスについてどのように取り扱われるか、今後が楽しみです。