大規模なデータガバナンスを推進するには

Miroslava ChrienovaによるPixabayからの画像

「グローバルでデータガバナンスを推進するには、何からどう着手すればよいのか?」「ホールディングス(HD)体制でのデータガバナンスは、どのような組織を考えればよいのか?」というお話を耳にする機会が増えました。
ある部門や事業部の範囲内で実施するガバナンスと同じ考え方が適用できるのか、大規模な組織特有の考慮すべき点があるのかどうかが、気になるところだと思います。
そこで、「何からガバナンスを始めるのか?」「どのようなガバナンス体制が必要か?」「ガバナンス組織の役割は?」に焦点を当てて、お伝えしていきます。

何からガバナンスを始めるのか?

DMBOKのナレッジエリア11個のうち、何からはじめるかは、データ戦略に沿って考えていくことになります。もちろん、全てが対象になるかもしれませんが、優先順位や濃淡を付けて推進していきます。この考え方は、グループ会社やグローバル拠点を横断した大規模なガバナンスであっても、ある組織に限られた場合であっても変わりません。

データ戦略としては、グループ・グローバル全体のシステムのスリム化やデータの最適化、DX推進に向けたデータ利活用環境整備、国の法令や業界規制などのコンプライアンス対応などが考えられます。昨今は、DX推進が経営戦略の主軸であるため、データ利活用環境整備をテーマにガバナンスに着手するケースが多いかもしれません。しかし、グループ・グローバル全体の統制を始めるならば、データが生み出されるところ、つまり業務システムやアプリケーションの最適な配置およびスリム化、それに伴うデータの最適な配置や最適化(重複なく最適化された構造で適切なシステムで管理すること)から始めるべきではないでしょうか。(EA:エンタープライズ・アーキテクチャとして、BA→DA→AA→TAと描いていくのがセオリーかもしれませんが、話が長くなるので割愛します。)
それらを表現した青写真が、エンタープライズデータモデル(EDM)になります。EDMは、グループ・グローバルを横断した視点で、データの重複がなく、整合性を担保したデータモデルとして策定します。そして、それらを生成するシステムをマッピングし、同じデータを複数のシステムが生成しないように、システムやパッケージの導入時に統制します。ここまでしっかり統制するのか?グループ・グローバル全体を横断して、マスタデータだけ統制対象とするのか?は濃淡があるので、緩やかに始めるのであれば、マスタデータだけ対象としてもよいでしょう。EDMは誰がどういう粒度で作成するのか、ガバナンスは誰がどこまで実施するのかについては、後段で述べていきます。

一方で、データ利活用基盤の整備やコンプライアンス対応も考えなくてはならない場合は、どうするとよいでしょうか。グループ・グローバルを横断してデータ利活用するというよりも、インフラは共有すれども、各社各拠点の範囲内で使用することが多いと思われます。よって、グループ・グローバル全体では、インフラ内部のデータの配置(アーキテクチャのどこにどのような形式でデータを置くのか)、データの標準化、データの可視化、データ品質維持管理、データセキュリティ(個人情報の取り扱いやアクセス権制御など)についての方針は定めるものの、各社各拠点でその方針に準拠するようにルールを具体化し、そして、そのルールに従って、データ利活用の際にガバナンスを効かせていくことになります。コンプライアンス対応も同様に、グループ・グローバル全体方針に基づき、各社各拠点が定めたルールでガバナンスしていきます。

どのようなガバナンス体制が必要か?

グループ・グローバル全体でのガバナンスですので、本社もしくはHDなど全体を束ねる統括組織に、データガバナンスの中央組織を設置します。そして、さらにグループ会社やグローバル拠点ごとにデータガバナンス組織を設置します。グループ会社やグローバル拠点のデータガバナンス組織は規模に応じて、一つもしくはその中での中央組織+業務領域別組織などを設置します。DMBOKでは、連邦型オペレーティングモデルという、統括する中央組織をセンターオブエクセレンスとし、配下に部門別データマネジメントグループを配置した組織体制を紹介しています。こちらが上記のイメージに近いかもしれません。
また、統括する中央組織と各社各拠点の組織間で定期的にコミュニケーションをとるために、データガバナンス委員会も設置しておくべきです。委員会の中で、ガバナンス方針や適用した際に発生した懸念事項などのフィードバックを受けたり、ガバナンスにおける問題解決をするようにしましょう。コミュニケーションがおろそかになると、各社各様にガバナンスが進んでしまい、独自路線のガバナンス方針が出来上がってしまったり、ガバナンスへの熱意に差が出てしまったりもします。定期的なコミュニケーションにより、ガバナンスの意識づけを改めて図ることは非常に重要です。

ガバナンス組織の役割は?

本社やHDに設置される統括する立場の中央組織と、各社各拠点の組織では、その役割に違いがあります。中央組織は、主にデータガバナンス方針策定、EDMの策定、ガバナンス組織の人材を育成するためのカリキュラム作り、データガバナンス委員会の運営(情報共有および問題解決)、各社各拠点のガバナンス推進支援(あくまでもサポート役)などになります。各社各拠点の組織は、データガバナンス方針を受けて、魂を込めた具体的なルールを検討し、データガバナンス規程・標準として策定します。そして、実際にシステム開発・導入プロジェクトや業務のガバナンスを実施します。中央組織がどこまでデータガバナンス方針を考え、各社各拠点で策定する規程・標準がどういう粒度かは、下記表にざっくりと整理しましたのでご覧ください。

規程・標準など 中央組織 各社各拠点の組織
EDM 全社の主要なエンティティを対象としたデータモデル。
(PK含む。可能であれば主属性も。)
全社EDMのデータ構造を踏まえた、各社各拠点のデータモデル。
全社EDMよりは登場するエンティティは多く、PK+主属性まで記載されている。
マスタデータ管理 ・マスタデータ管理対象を決める基準。
・マスタデータ管理の推奨アーキテクチャ、運用プロセスフローなどの基本的な考え方。
※ただし、グループ・グローバルを横断して管理すべきマスタについては、コード採番、メタデータ提供、マスタデータ配布まで実施する。
・左記方針にそって、マスタデータ管理対象を定義。
・定義されたマスタを管理するアーキテクチャ、マスタデータを維持管理する運用プロセスを具体的に記述。
・マスタデータのメタデータ標準コード一覧も整備。
データモデリング ・モデリング文法
・ネーミングルールの考え方
・標準化方針
・推奨ツール
・ネーミングで使用される標準用語集
・標準化方針の提供範囲
など
メタデータ管理 ・可視化する範囲
・メタデータアーキテクチャまたはツール(全社で共有を想定)
・メタデータ登録運用方針
・メタデータ登録運用プロセスフローや手順の具体化(実組織、登録タイミングなど)
・メタデータ登録方法など
データセキュリティ ・機密区分の定義
・アクセス権制御単位の考え方(個人ごとではなく部署ごとにするなど)
・アクセス権付与の運用方針
・個人情報保護のために必要な制御
・機密区分に該当する情報一覧
・アクセス権付与の単位や運用プロセスフローや手順の具体化
・保護対象となる個人情報一覧とその制御方式(例えば、個人名はマスキングする、と定めた方針など)
Etc.    

先ほども述べましたが、システム開発・導入プロジェクトや業務のガバナンス自体は、各社各拠点で頑張ってもらいます。最初の立ち上がりは大変でしょうから、中央組織が支援するようにします。また、以前のブログでも、「ルールでガバナンスか」「人でガバナンスか」などを述べていますので、こちらも参考にしてください。

https://metafind.jp/2023/10/30/datagovernance_approach/

最後に

実は一番難しいのは、ガバナンス人材の育成かもしれません。統括する中央組織ですら人が集まらないのに、各社各拠点で集まるかどうか、懸念される点ではあります。しかしながら、データが第4の資産と言われている昨今において、この資産を適切に管理するための人材の育成は、時間が掛かったとしても取り組まないといけないですね。
弊社ではそのような人材を育成するためのデータマネジメント教育を多数取り揃えておりますので、是非ともお声がけいただければと存じます。

データマネジメント・アカデミー:
https://metafind.jp/education/data_management_academy/