データガバナンスとCDO:DMBOK 2nd editionを読んで その4
最近、”データガバナンス対応”を掲げたツールが増えてきました。とは言え、「データガバナンス」という言葉が具体的になにを意味するのかイメージしづらい方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、DMBOKの第2版1(以下“DMBOK2”)から引用しつつ、データガバナンスについて解説してみます。
データガバナンスとはなにか
「データガバナンス」を、DMBOK2では次のように定義しています。
データガバナンスのゴールは、組織がデータを資産としてマネジメントできるようにすることである。
データガバナンスは、データを資産としてマネジメントし、あらゆるレベルでデータマネジメント活動を導くための原理原則、ポリシー、プロセス、フレームワーク、メトリクス、監督を提供する。
私自身はこの定義で挙げられている要素を分類して、次の3つの活動がデータガバナンスだと解釈しています。
- 守るべきもの(原理原則、ポリシー)を定め、
- 守らせるための仕組み(プロセス、フレームワーク)を構築し、
- 守られているかをチェック(メトリクス、監督)する
データガバナンスのリーダーシップはCDOがとる
DMBOK第1版では、CIOとその部下のデータガバナンス執行役が、データガバナンスのリーダーシップを担うと言われていました。
しかし、一般的にCIOが担うべきガバナンスは”ITガバナンス”であり、ITへの投資/効果/リスクを継続的に最適化する視点で意思決定を行います。そうして下した決定がデータガバナンスの視点と一致しないこともあるでしょう。
そのため、DMBOK2ではデータガバナンスのリーダーシップを取る役割として、チーフデータオフィサー(CDO)を定義しています。
CDOはまた、次の事項でも中心的な役割を持つと書かれています。
- 組織のデータ戦略の確立
- IT/ビジネス資源とデータ中心の要件の整合
- ビジネスアナリティクス/ビッグデータ/データクオリティ/データテクノロジなどのデータに依存した取り組みについて、ビジネスに助言(とサービス)を提供
- アナリティクスとBIにおけるデータの使用の監督
データガバナンスの考え方とCDO設置の拡大
現在、AIやIoTといった新しいデータ利活用に幅広い企業団体が取り組んでおり、上記のようなアナリティクスに対する助言や監督が必要とされています。一方で、2018年以降に改正個人情報保護法やGDPRといった規制の施行が続き、そのための新たな社内ルールや仕組みの制定も必要とされています。
それらのニーズに応えて、データガバナンスの考え方とCDOの設置が今後日本でも広まっていくでしょう。
(シニアコンサルタント 高橋章)
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DMBOKの第2版
データマネジメントの専門家が集まる非営利団体、DAMA Internationalが策定した、データマネジメント知識体系ガイド(Data Management Body Of Knowledge)の第2版。2017年時点で、英語版のみ出版されている。 ↩