データマネジメント活動の評価

日本語版DMBOK2※が近々再増刷されるそうです。2018年の第1刷発行から今回で第3刷目となりました。ページ数も多く高価なことから、当初はこれ程多くの方に読まれることになるとは予想していませんでした。読者の皆様ありがとうございました。

https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/18/270160/

DMBOK2の売れ行きが示す通り、多くの企業がデータマネジメントに取り組んでいる状況であると認識しています。先行して導入した企業の中には、マネジメント層から成果を求められ始めている所もあるのではないでしょうか。そこで今回は、データマネジメント活動の評価をテーマにお話ししたいと思います。

データマネジメント活動は大きな投資を伴います。それなりの投資をするのであれば、それに見合う価値が本当に出ていることを経営やマネジメント層に証明しなければなりません。このことからも、データマネジメント活動を定期的に評価するプロセスを確立することをお勧めします。では、データマネジメント活動の価値をどのように定義しそれをどのように評価すればよいでしょうか。そもそもデータマネジメントは、企業内のデータ資産を整備する言わば公共インフラ事業のようなものです。それを実施しただけでは、企業にとっての直接的な価値は生み出しません。データが利活用されて、それによりビジネスが改善されることで初めて価値が生まれます。そこで、まず初めにデータ利活用やビジネス改善で生まれた価値を算定し、次にそれらの価値に対してデータマネジメントがどれだけ貢献できたか、両者を紐づけながら評価する必要があります。

では、具体的にどのように評価すればよいでしょうか。まず、データ利活用の推進やビジネスの改善効果について。例えば次のような評価指標を考えてみます。

  • 全社的にデータ利活用が活発に行われていること
    • Ex. 年間のBIプロジェクトの数やレポートの増加数など
  • データ利活用業務が効率的に行われていること
    • Ex. BIレポートの開発期間短縮率、データ加工工数の削減率など
  • ビジネスの改善成果が出ていること
    • Ex. マーケティング精度の向上による顧客引合の増加率
    • Ex. 余剰在庫の削減金額など

次にデータマネジメント活動の評価指標を紐づけて考えてみます。例えば上に記載した評価指標のなかで「データ加工工数の削減率」があります。これを実現するために、因果関係があるデータマネジメント活動は何かを考え、その評価指標を設定します。

  • 国内外の主要データがあらかじめ収集できていること
    • Ex. データ統合基盤のデータ収集数、収集システムの網羅率
  • 収集したデータが標準化され横串を刺せる状態になっていること
    • Ex. あるべきデータモデルとの準拠率、標準コードの適用率など
  • 不正確なデータや欠損値がないこと
    • Ex. データ品質スコア、許容しきい値との乖離率など

このように、評価指標を紐づけて考えることは重要です。そうすることで、データ利活用やビジネス改善の活動成果に対して、データマネジメント活動がどれだけ貢献できたのか(不十分だったか)を検証することができるからです。

また、上記の評価指標以外にも、生産性やコスト観点の指標を追加してみるのも有効です。たとえデータの標準化が実施できたとしても、多大な期間や工数が掛かってしまったのであれば、今後の取り組み方を見直さなければなりません。これらの評価指標に着目し、持続可能な運用スキームを模索していくとよいでしょう。

データマネジメントはその活動が見えにくく、成果を出すにも時間が掛かります。そのため周囲から理解や賛同が得られず、苦しんでいる担当者の方々が沢山いるように感じています。今回ご紹介したような、データマネジメント活動の評価プロセスを確立することで、担当者が正当に評価され、彼らのモチベーションも維持できるようになると期待しています。