海外カンファレンスから先進的なデータマネジメントを学ぼう

Image by 정훈 김 from Pixabay

データマネジメント(以下DM)とデータガバナンス(以下DG)のトレンド(悩み・課題や実際の解決策)は、欧米が数年先行しています。そのため、自社と同じ課題・悩みに他社がどう取り組んでいるのか、今後どんな問題にぶつかりそうかを知るなら、海外の事例やソリューションを学ぶと効率が良いと思います。

今年はコロナウイルスへの対応で、海外カンファレンスの多くがWEB開催に切り替わっています。これを機に、海外カンファレンスに参加して学んでみてはいかがでしょうか。

カンファレンスはプロから直接学べる

DMBOKはDMとDGについての必要な知識や技術体系を網羅していますが、それを実践するためのアクティビティや成果物に対する具体的な記述はあまり載っていません。たとえば成果物として「規約」を作ると書いてあっても、具体例が無いので読者は何を書けばよいのかで試行錯誤することになります。海外カンファレンスでは実際の成果物を紹介してくれるセッションが多いので、どんなものを作ればよいのかイメージが沸いてきやすいです。なにより成果物を作った本人が発表しているので、質問してその場で疑問を解消することができます。もしくは、海外講演者の多くはSNSの連絡先をオープンにしているので、後日質問してみてもよいでしょう。また、たいていの海外カンファレンスは通常の1時間程度のセッション枠とは別に、半日以上のワークショップを設けており、集中してDM/DGの方法論を学ぶことができます。

「世界で最高の教育とは、その道を極めた人の働く姿を見ることだ」という言葉がありますが、海外カンファレンスは見るだけでなく、専門家と直接会話して理解し、さらに自分のDM/DGコミュニティを世界に広げる機会にもなります。

世界の代表的なDM/DGカンファレンス

ここでは非ベンダー系でDM/DGの専門家が集う代表的なカンファレンスを紹介します。

Enterprise Data World(以下EDW)

https://edw2020.dataversity.net/

非ベンダー主催のカンファレンスとしては世界最大のイベントで、毎年200以上のセッションに1000人以上が来場します。DMの教育機関であるDataversity(https://www.dataversity.net/)が、アメリカ合衆国で毎年春に開催しています。グローバル企業とその先進的なDG事例が、数多く発表されます。たとえば、日本でもようやくCDO(Chief Data Officer)の露出が増えてきましたが、EDWでは2013年にはメイントピックとして取り上げられていました。

今年はすでに3月にWEB開催されましたが、コロナウイルス対応により中止になったセッションもありました。そのため、今度の10月21、22日(米国太平洋標準時)にEDW Virtualと題して、無料のWEBカンファレンスが追加開催されます。

https://edw2020virtual.dataversity.net

規模が大きいにも関わらず、どのセッションも非常にフレンドリーで、質問がしやすいです。ときには質問が盛り上がり過ぎてその場で議論がはじまることもあります。ただ、DG現場の生の声を聞けるので悪くはないです。筆者も2017年にデータモデルをテーマに発表しましたが、これをきっかけに海外のDM専門家の知り合いが増えました。

IRM UK

https://irmuk.co.uk

イギリスのビジネス・ITトレーニングの専門組織IRM UKが、EA/BI&BA/DGなどの複数のテーマで、毎年秋にカンファレンスを開催しています。欧州企業は多言語のデータを扱うからか、MDMの発表も伝統的に多いです。今年は例年より規模を縮小しているものの、WEBカンファレンスが11月に開催されます。

https://irmuk.co.uk/events/enterprise-data-conference-europe/

Asian Data Management Conference(以下、ADMC)

実は日本でも、DM/DG専門家のカンファレンスを開催しています。DMBOKを編纂した、DAMAの日本支部が主催しています。毎年、海外のDM/DG専門家と日本のユーザ企業を招いてセッション発表とパネルディスカッションを実施していましたが、今年は11月10日にWEBカンファレンスとして実施されます。

https://www.dama-japan.org/ADMC2020.html

EDW/IRM UKと違い海外スピーカーの講演は翻訳されますから、英語圏のカンファレンスにハードルを感じる方は、まずはADMCに参加して情報を収集してみてはいかがでしょうか。

海外の有名スピーカー

これまで紹介した3つの国際的なカンファレンスには、ほぼ毎年のように講演している名物スピーカーがいます。ここでは筆者がお薦めする3名の方を紹介します。

ピーター・エイキン Peter Aiken

https://twitter.com/paiken

米国のDMコンサルタントで、DAMA-Internationalの元会長。幅広いDM施策を実施した経験があり、データ品質、データモデリングの自動化、CDOのケーススタディ、データアーキテクチャなどなど、さまざまなテーマを発表しています。近年はその幅広い知識を基に、データ戦略について発表することが多いです。

マイク・ファーガソン Mike Ferguson

https://twitter.com/mikeferguson1

英国のITコンサルタントで、メタデータ管理を中心に活躍しています。最近は、メタデータを最新のテクノロジーでどう活かしていくかに関心があるようで、仮想データ統合や、グラフDBによるBI&BAなどについて発表しています。10月のEDW Virtualでも、「AIを活用したデータ管理とアナリティクス」と題して発表します。

https://edw2020virtual.dataversity.net/sessionPop.cfm?confid=144&proposalid=12551

スティーブ・ホバーマン Steve Hoberman

https://twitter.com/datamdlrockstar

米国のデータ専門家で、データモデリングのカンファレンスを主催し、DM/DGの出版社も運営しているマルチタレントな方です。専門分野はデータモデリングで、近年はモデルが要件を適切に表現できているか評価する、データモデルスコアカードについての発表が中心です。今度のADMCのメインスピーカーのひとりなので、データモデリングの知識を広げていきたい方は聴講されてはどうでしょうか?

カンファレンスで講演者と話すのに気恥ずかしさを感じる方もいるでしょう。ただ、これまで紹介したように、国際カンファレンスで大人しくしているのはもったいないので、疑問をぶつけてみてください。きっと新しい気づきが得られるでしょう。