日本初の「データスチュワードシップ」の書籍が出版されました!

データマネジメント&ガバナンスの実践ガイド

先週末、デビッド・プロトキン(David Plotkin)氏が執筆し、弊社コンサルタントが翻訳した「データスチュワードシップ データマネジメント&ガバナンスの実践ガイド」が日経BP社から出版されました。
データスチュワードシップ データマネジメント&ガバナンスの実践ガイド
本書は、データスチュワードをテーマにした日本で初めての書籍です。

弊社は早くからデータスチュワードの役割とその重要性について紹介してきました(文末関連記事をご参照ください)。
その甲斐もあってか、「データスチュワード」を設ける企業や組織が日本でも増えてきました。その一方で、データスチュワードが自社で具体的に何をするのか、そもそも誰にその役割を担ってもらうのが適切なのか、悩まれるケースも多いのではないでしょうか。
そのような課題を解決に導く実践的なノウハウが、本書には詰まっています。

プロトキン氏は、冒頭で「データスチュワードシップとはデータガバナンスの運用面であり、つまり、そこでデータガバナンスの日常業務の大半が行われる」と定義し、続く各章で日常業務の詳細について解説していきます。
まずデータスチュワードをいくつかのタイプに分類し、それぞれの役割と責任について解説しています(第1~3章)。
また、データスチュワードをはじめて設ける組織がなにをするべきか、任命されたスチュワードをどう育成するかを述べてから(第4、5章)、メタデータとデータ品質の管理を中心にデーガバナンスを支える日々の活動を詳細に説明しています(第6、7章)。
そして、日々のデータガバナンス活動を社内で正当に評価してもらうための評価軸、それと組織への定着と貢献を測る成熟度について紹介し(第8、9章)、さらに定着した企業が目指すべき次のステージについて述べています(第11章)。
データレイクをはじめとしたビッグデータへのデータスチュワードの役割についても触れており(第10章)、その内容は機械学習や生成AIといった最近のトピックにも適用できるものです。

またプロトキン氏は本書の重要なメッセージとして、IT部門ではなくビジネス部門がこうしたデータスチュワード活動の主体となるべきだと、一貫して主張しています。
現在も日本の多くの企業では、プロトキン氏の定義する複数タイプのデータスチュワードが分担して担うべき役割を、IT寄りのデータアーキテクトやデータエンジニアなどのデータ関連職が担い、本来ビジネス部門が担うべきデータの意味定義の作成や更新をしています。
ただビッグデータ時代を経てAI時代に入った今、組織が扱うデータの量は膨大になり、さらに種類と質はあまりにも多様です。
データ活用にはビジネスへの直接的な貢献が求められ、ビジネス知識と高いデータ品質が要求されています。こうしたなか、IT部門だけでデータの環境整備を進めるのは負担も大きく、十分な責任を果たすこともできません。様々なツールやアプリケーションが開発され、導入も進んでいますが、そもそもそれらを使いこなす知識や人材はIT部門だけでは不足しています。
今こそ、知識を持つビジネス部門が、データスチュワードとして積極的に活動を担い、データガバナンスへ貢献すべきではないでしょうか。

弊社は、データスチュワードを職務として定着させ、データ駆動型企業を実現するための福音となることを目指して、本書を翻訳しました。
実は、プロトキン氏が米国の金融業を中心にキャリアを積んできたため、本書で紹介される役割、体制、ルール、進め方は金融業の特性を反映した非常に精緻なものとなっています。皆さんの業界に照らし合わせて、「このやり方は我々の業界ではどう当てはめていくとよいのか」を考え、工夫しながら取り組んでみてください。すべてを一度に導入するのは大変なので、適用できそうな範囲からスモールスタートしていくとよいでしょう。
また本書には実際の現場で使われた多くの成果物サンプルが掲載されています。これらはプロトキン氏が40年にわたるデータスチュワードシップ活動のなかで、実際に使用してきたものです。ちいさな図表でも多くの知見が込められていますので、ぜひ参考にしてください。

翻訳者一同、本書が日本におけるデータスチュワードシップの実践の一助となることを心から期待しております。

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