データマネジメントの国際資格「CDMP Practitioner」認定への挑戦

CDMP(Certified Data Management Professional)」は、データマネジメントの国際資格として広く知られています。初級レベルの「CDMP Associate」認定者は、日本国内でも徐々に増えており、転職時の推奨資格になっている求人も見かけるようになりました。一方で、次のステップである「CDMP Practitioner」の認定者は世界全体でも非常に少なく、Associate認定者の約6%にとどまっています。(2025年4月時点)

こうした状況の中、私自身、Associate認定を取得してから約5年が経過し、データマネジメント領域でのコンサルティング経験も増えてきたので、今回Practitioner認定に挑戦することにしました。本ブログでは、Practitioner認定に必要な試験の特徴や、私自身の受験対策などをご紹介しますので、CDMPに興味・関心のある方々にとってのご参考になれば幸いです。

なお、Associate認定時の体験談や試験対策については、下記のブログで細かく紹介していますので、ご興味ある方はコチラもご覧ください。

2週間で合格!CDMP合格体験記

CDMP取得に向けた勉強方法

CDMP Practitioner認定の鍵は、“Specialist Exams”

CDMPの公式サイトで記載されている各レベルの認定要件を整理すると、以下表のようになります。

CDMPの各レベルの認定要件

Practitionerの認定を受けるためには、必須試験のData Management Fundamentals(データマネジメント基礎)で70%以上、2つの専門分野を選択して受験するSpecialist Exams(専門分野試験)でそれぞれ70%以上のスコアを獲得する必要があります。Specialist Examsは、以下の7分野があり、この中から自分が得意とする分野を2つ選択します。(2025年6月時点)

・Data Governance(データガバナンス

・Data Modeling and Design(データモデリングとデザイン)

・Data Warehousing and Business Intelligence(データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス)

・Data Quality(データ品質

・Master and Reference Data Management(マスタデータと参照データ管理)

・Data Integration and Interoperability(データ統合と相互運用性)

・Metadata(メタデータ

AssociateとPractitionerの大きな違いは、このSpecialist Examsであり、この試験の突破こそが、Practitioner認定における重要な鍵となります。Data Management Fundamentalsの試験では、DMBOKに記載された知識を問う出題が中心ですが、Specialist Examsは、DMBOKからの出題に加えて、他の文献や実務経験を前提とした設問も含まれており、難易度が非常に高い試験です。そのため、Practitioner認定に向けた準備として、各専門分野の出題傾向や試験内容を予め把握しておくことが重要になります。

Specialist Examsの特徴

7つの専門分野のうち、今回はData Governance(データガバナンス)、Metadata(メタデータ)、Data Quality(データ品質管理)の3つに絞って紹介します。

Data Governance(データガバナンス)

試験の特徴を知りたい方は、試しに次のサンプル問題を解いてみてください。


設問1 ある医療機関では、患者のプライバシー保護が不十分なデータ管理であったために、一部の職員が患者情報に不正アクセスするなど、データプライバシー規制違反が発生した。このような課題に対して、データスチュワードはどのように対応するとよいか?

a. ITおよびセキュリティチームと連携し、役割と権限に基づいた患者記録へのアクセス制御、およびユーザー認証の仕組みを実装する

b. 患者データを保存中および送信中の両方で暗号化するよう提言することで、不正アクセスを防ぎ、患者のプライバシーを保護する

c. 患者の記録へのアクセスを追跡・監視するための監査証跡を確立する

d. データプライバシー規制、患者情報保護の重要性、及び規則違反の影響などに関する、従業員向けの研修を開発する

e. 上記すべて

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解答:e

出典元:Data Strategy Professionals(原文は英語)

Data Governanceでは、このような問いを約1分で(しかも英語で全100問)解かなければなりません。Data Governanceの特徴は、上記のようなシナリオに基づいた長文問題を中心に構成されており、速読力と情報整理能力に加えて、実務に即した判断力が問われる点にあります。また、出題範囲も広く、データ倫理、データ品質、メタデータ管理、データモデリング、など、DMBOKにおける複数の知識領域を跨いだデータガバナンスに関する活動について問われます。Data Management Fundamentals試験では問われなかった、DMBOK2の第15章、第16章、第17章に関する内容も出題されるようです。DMBOKのデータガバナンス章の知識だけでなく、他の活動と絡めて包括的な理解が求められるため、他のSpecialist Examsと比較しても難易度は高く、受験者のなかで「一発合格は難しい」という声があるのも頷けます。逆に言えば、それだけ高度な知識と実務力を証明できる資格としての価値があるといえるでしょう。

Data Quality(データ品質管理)

Data Governanceと同様に、シナリオに基づいた読解問題が多く出題されるようです。それに加えて、DMBOKに載っていない統計の問題が含まれ、難易度が上がっています。たとえば、以下のような設問です。

設問2 次の数字の集合のモードは?

{11, 11, 20, 28, 33, 50, 52, 87, 91, 97}

a. 10

b. 11

c. 41.5

d. 48

e. 86

クリックして答えを見る

解答:b

出典元:Data Strategy Professionals(原文は英語)

モード(最頻値)の意味を知っていればすぐに答えられますが、統計に馴染みがない場合は難しく感じるでしょう。統計に抵抗がある方は、統計検定の初級レベルを学習しておくのが有効です。

Metadata(メタデータ)

こちらは、海外の受験者の間で人気がある試験のようです。DMBOK2第12章だけでなく、以下のように他の章に存在するメタデータに関する内容への理解も求められています。

・第5章 データモデリングとデザイン:3.4 メタデータリポジトリ
・第7章 データセキュリティ:3.6 メタデータの追跡、4.3 メタデータにおけるデータセキュリティ属性

・第9章 ドキュメントとコンテンツ管理:1.3.1.2 コンテンツメタデータ

・第13章 データ品質:6.2 データ品質とメタデータ管理 など

データモデリング、データセキュリティ、非構造データ、データ品質など、複数の知識領域と関係してくるため、各領域におけるメタデータの重要性や役割をしっかりと理解しておく必要があるでしょう。

CDMP Practitioner認定に向けた試験対策

私は、CDMP Practitionerの認定に向けて、Specialist Examsは、Data QualityとMetadataを選択しました。Data Qualityを選択した理由は、前職で少しだけデータ品質活動に関わりがあり、かつ統計検定2級を保持しているため対策がしやすいと感じたからです。また、Metadataを選択した理由は、比較的最近までプロジェクトで携わった分野のため、取り組みやすいと判断したからです。それぞれの試験対策としては、以下のような準備を進めています。

データ品質Data Qualityについては、DMBOK第1版第2版の「データ品質」章の精読に加え、データ品質が登場する関連章も網羅的に確認します。あわせてDMBOK2「データ品質」章でも引用/推奨作品として紹介されているDanette McGilvray氏の著書『データ品質実践プロジェクトガイド』もこの機会に通読する予定です。また、かつて取得した統計検定の内容も軽く復習し、統計問題への備えもしようと考えています。

Metadataについては、DMBOK第1版・第2版の「メタデータ」章の精読に加え、前述の「メタデータ」がキーワードとして登場する他の章を確認しておこうと考えています。また非公式ではありますが、練習問題がUdemyのセールで安く販売されていたので購入し、腕試しとして取り組んでみようと思っています。

Data Management Fundamentalsの対策としては、DMBOK2の他の章をざっと見直した上で、一般社団法人 データマネジメント協会(DAMA)日本支部が会員向けに提供しているDMBOK解説動画の閲覧や、DAMA日本支部の第16分科会(CDMP勉強会)が提供している練習問題を活用する予定です。また非公式ですが、こちらもUdemyにCDMP対策コースがあるので、受講を検討しています。

世界標準のデータマネジメント力を証明する「CDMP」認定の意義

日本国内でも、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「データベーススペシャリスト試験」に加え、同機構は2027年度に「データマネジメント試験」の導入を予定しています。これは、日本国内の企業におけるデータマネジメントを後押しする動きとして、非常に前向きな変化だと感じています。一方で、グローバルにビジネスを展開する企業においては、データマネジメントは日本国内にとどまらず海外拠点も含めた活動が求められます。だからこそ、データマネジメントの共通言語の理解やスキルの裏付けとして、国際的に認知されている「CDMP」の認定は、データマネジメントのプロフェッショナルとしては非常に意義深いと感じています。

CDMP試験は英語で行われるため、敷居が高く感じられるかもしれません。受験をためらわれている方の中で、CDMP Practitionerに関心のある方や、いつか挑戦してみたいと考えている方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いです。既にAssociate認定を保持し、さらに先に進みたいと思われた方は、この記事を契機に一緒に取り組んでみませんか!

なお、Specialist Examsを受け終えた後に、出題傾向や学習法などを改めてブログでご紹介したいと考えています。今後の記事もぜひご期待ください。

参考リンク

今回のブログを執筆するにあたって参考にした、海外のCDMP関連サイトはコチラです。

Data Strategy Professionals

 →CDMPを含むデータ関連資格の獲得に向けて、学習プランや演習問題、ビデオ講義などの教材を提供する学習支援サイトです。

Modelware Systems

 →CDMPの資格取得に特化した、学習教材や模擬試験、研修などを提供している企業です。

Facebook CDMP Study Group

 →4,000名超が参加する、CDMPに関する情報交換を行っているFacebook上のグループです。

※上記はあくまで筆者が参考にしたwebサイトであり、弊社が公式に推奨する教育機関等ではございません。