データガバナンス用語解説9:エンタープライズ・データモデル

システム再構築や全社データ利活用推進などを契機にデータマネジメントに取り組まれる際に、「エンタープライズ・データモデル」というキーワードを耳にされることがあるのではないでしょうか。今回は、企業全体のデータ構造を定義する方法の1つである、エンタープライズ・データモデルについてご紹介します。

エンタープライズ・データモデルとは?

DMBOK2第4章「データアーキテクチャ」では、エンタープライズ・データモデル(以下EDM)は、「エンタープライズレベルの実装に依存しない概念データモデルであり、企業全体にわたるデータに関して一貫した共通のビューを提供する」(P133より抜粋要約)と説明されています。EDMは「データアーキテクチャの制作物」の1つであり、これらを制作することで、「全社的なデータ要件を定義し、データ統合の方向性を示し、データ資産を管理し、データ投資をビジネス戦略と整合させる」(P130より抜粋要約)ことができます。一般的にデータモデルと言うと、DB設計のために作成する物理的なER図を思い浮かべることが多いと思われますが、EDMは、企業全体のデータ資産のマスターとなる「青写真」として定義されたデータモデルのことを指します。

エンタープライズ・データモデルの意義

EDMが価値を発揮するケースを2つ紹介します。

1. 大規模システム再構築

複数の業務領域に跨がるシステム再構築は、データの整合性確保が非常に難しいです。規模が大きいため、通常は幾つかのサブシステムに分割してプロジェクトを推進します。その場合、どうしてもサブシステム毎に個別最適な設計がされてしまいます。結果として、プロジェクト終盤で業務領域間のデータが上手くつながらないことが発覚し、プロジェクト全体で手戻りが発生したり、業務領域間で複雑なデータ変換が生まれたりします。しかし、サブシステムの設計が行われる前にEDMが整備されていれば、上記のような事態を避けることができます。EDMにより、サブシステム間で連携するデータ構造があらかじめ設計されているため、各サブシステムはそれらを踏まえてデータ設計すれば自ずと整合性を確保することが可能となります。

2. 全社データ利活用推進

現在、組織や業務を横断した全社規模のデータ利活用に取組む企業が増えています。その中では、業務革新策とともに多種多様なデータニーズが生まれています。一方で、自社のデータ資産は十分に可視化されていないことが多いのも事実です。せっかく有効なデータ利活用施策が検討されたとしても、必要なデータの特定や調査に多くの時間が費やされてしまい、先に進めなくなることがあります。事前にEDM上で自社のデータ資産が可視化されていれば、このような事態を避けることができます。EDMがあれば業務領域を跨いで「どこに」「どのようなデータがあるか」といった情報だけでなく、「どのような構造でデータが存在しているか」「どのデータと関係しているのか」まで定義できます。自分が欲しいデータの粒度や項目、関係するマスタデータまで容易に把握することが可能となります。

最後に

EDMは、全社規模のデータ要件を一つのデータモデルとしてデータ構造を表現することが可能であり、ナレッジとして共有しやすいものでもあります。今後、大規模システム再構築や、全社規模のデータ利活用などに携わる方は、今一度EDMの作成を検討してみてはいかがでしょうか?